『彼の真実、彼女の嘘』レビュー|ジョン・バーンサルという“静かな凶器”に支配される

Netflix彼の真実、彼女の噓キャストあらすじ見どころ レビュー
(c)Netflix

『彼の真実、彼女の嘘(His & Hers)』は、殺人事件を描いたミステリーだが、事件以上に物語を支配しているのは、ジョン・バーンサル演じる刑事ジャックの不安定さだ。彼は叫ばない。暴れない。それでも画面に映るだけで、空気が張りつめる。このドラマの怖さは、どんでん返しよりも、「いつ壊れるかわからない男」を見続けることにある。

物語を支配する、ふたりの視点

『彼の真実、彼女の嘘』は海外レビューでも高く評価されている本作。物語は、ひとつの事件をめぐり、まったく異なる立場にいるふたりの視点によって進んでいく。どちらの語りももっともらしく、同時にどこか信用しきれない。

真実に近づいているようで、実は遠ざかっているかもしれない——そんな感覚が、回を重ねるごとに強まっていく。

ジョン・バーンサルが“不安定すぎる刑事”を演じるということ

彼の真実、彼女の嘘レビュー,ジャック役を演じるジョン・バーンサル
(c)Netflix

ジャックは一見、有能で正義感の強い刑事だ。だが捜査が進むにつれ、その言動は微妙にズレ始める。決定的な暴力は、ほとんど描かれない。

それなのに、視線の動き、沈黙の長さ、立ち方ひとつで「この人は信用してはいけない」と察してしまう。

バーンサルは、怒りを爆発させる一歩手前を演じ続ける。その“抑制”こそが、本作を異常な緊張感で満たしている。

嘘を抱えた女と、怒りを隠せない男

彼の真実、彼女の嘘レビュー,アナ役を演じるテッサ・トンプソン
(c)Netflix

テッサ・トンプソン演じるアナは、感情を内側に押し込める人物だ。過去の喪失と後悔を胸に秘めながら、冷静な顔で事件に関わっていく。対照的に、ジャックは感情が表に滲み出る。正義を語るほど、その怒りは隠しきれなくなっていく。

この2人の対比が、本作を単なるミステリーから心理スリラーへと引き上げている。

ジョン・バーンサルの新しい引き出し

暴力は少ない、怖さは段違い

彼の真実、彼女の嘘レビュー,ジャック役を演じるジョン・バーンサル
(c)Netflix

『パニッシャー』のような激しいアクションを期待すると、正直、肩透かしを食らうかもしれない。

だがその代わりに用意されているのは、静かで、持続する恐怖だ。

これは“静かなパニッシャー”である

フランク・キャッスルが怒りを外にぶつけた男だとすれば、ジャックは怒りを内側で腐らせている男。

バーンサルが演じてきたキャラクターの中でも、最も不気味で、最も現実的な危うさを持つ人物と言える。

このドラマがただのミステリーで終わらない理由

『彼の真実、彼女の嘘』が印象に残るのは、犯人当てやどんでん返しだけに重きを置いていないからだ。

物語の中心にあるのは、忘れられなかった過去、処理しきれなかった怒り、そして「正しい側」に立っているはずの人間の危うさ。

ジョン・バーンサル演じる刑事ジャックは、正義を語りながらも、感情を制御しきれず、その怒りを静かに内側で育てていく。

彼は決して怪物として描かれない。むしろ現実にいそうな、理解できてしまう存在だ。だからこそ、この物語は単なるミステリーを超え、人間の感情そのものを描いた心理スリラーへと変貌していく。

バーンサル好きにおすすめの理由

このドラマで一番怖いのは、犯人でも結末でもない。

正義の側にいるはずのジョン・バーンサルが、どこまで壊れていくのかを、最後まで見届けてしまうことだ。

『パニッシャー』好きなら、期待は裏切られる。だがその代わりに、もっと厄介で、もっと後を引くバーンサルを見せられる。

――これはバーンサルの新たな一面に惹かれる人には、強く印象に残る作品だ。

関連記事

『彼の真実、彼女の嘘』キャスト・あらすじ・見どころ|2つの視点が交錯する心理ミステリー

紹介している作品は掲載時点の情報です。放送・配信終了している場合もありますので、詳細は各公式ホームページや公式アプリにてご確認ください。