ドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』6話。
3名の被害者を出した殺傷事件に隠された母親の育児放棄、そして残された兄弟の悲しい結末が描かれていました。
犯人はなぜ事件を起こしたのか。
詳細を知るごとに胸を締め付けるほどの悲しみが襲いかかります。
6話あらすじ
2019年5月9日の15時過ぎ、墨田区錦糸7丁目付近の路上で殺傷事件が発生。被害者3名のうち1名が死亡し、被疑者は既に確保したものの自殺を図り現在意識不明の状態でした。
被疑者は身元を証明するものを所持しておらず、氏名、年齢、職業などすべて不明。そのため、計画的犯行なのか連続通り魔なのか、動機も一切わかりませんでした。
すでに被疑者を確保していることもあり特捜は立ち上げず、今回は犯人の身元確認と同期を調べることに……。管轄である上本所署は、強盗殺人事件による人手不足ということから、姫川班が捜査協力を求められます。
姫川班は捜査に当たり、上本所署の越野係長から事件の詳細について説明を受けました。
☑被害者は以下3名
・峰岡里美(49歳)
前方からいきなり刺され、腹部、背部、他数カ所に刺傷を負わされた。里美は犯人から逃れ、通行中の男女に助けを求めた。
・菅沼久志(32歳)
被疑者ともみ合いになった末、左頸部を切られ病院に搬送されたが、搬送直後に死亡が確認された。
・尾崎彩美(28歳)
身を守った際に右腕を切りつけられて負傷。さらに転倒時に左前額部に擦過傷を負った。彩美は軽傷で済んだものの、精神的ショックが大きく事情聴取できていない状態。
菅沼久志と尾崎彩美は会社の同僚で、近くの飲食店から出てきたところで巻き込まれた。
・被疑者と思われる人物
犯行後、現場付近の公園敷地内の公衆トイレで包丁を使い、右頸部を切って自殺を図ったもよう。人着は一致しているものの、現時点では男が意識不明ということで自供が取れず、回復次第逮捕する方針。
姫川と菊田は、最初の被害者である峰岡里美の入院先に行き事情を聞いてみることに……。医師からは「薬により意識が朦朧としている」と聞ていたので、質問についての答はハイなら短く、イイエなら瞼を長く閉じるよう里美に説明しました。
里美からの証言では犯人とは面識はなく、恨まれる覚えもないとのこと。しかし、対人関係を聞いた時の、わずかな反応を菊田は見逃さなかったのです。
犯人を知っている可能性がある。そう思った姫川は、まずは峰岡里美の対人関係を調べることに……。
『ストロベリーナイト・サーガ』6話の解説
葉山のトラウマ
葉山と湯田は、もうひとりの被害者・尾崎彩美に聞き込みに向かいましたが、彼女は立ち直れておらず、会うことも出来ませんでした。
葉山は自分から尾崎彩美に話を聞きたいと姫川に願い出ましたが、その理由は葉山が抱えるトラウマにあったのです。
彼は少年時代に、何でも話せるお姉さんのような存在である家庭教師を、目の前で殺されてしまいました。犯人とすれ違うも足がすくんで動けず、証言することも出来なかった情けない自分を変えたくて刑事になったようです。
前の事件でも彼は、犯人を目の前にしたとき足がすくみ刑事としての任務が行えなかったことがあります。それも彼が抱えているトラウマが原因だったのかもしれません。
結果、葉山の想いが尾崎彩美に届き、被疑者は峰岡里美に「ヒロに謝れ!」と言っていたと証言を得ることが出来ました。
ヒロとは誰か?峰岡と犯人の関係は?
峰岡里美の過去を調べ始めた姫川班は、かつて彼女が暮らしていたという千葉のアパートを捜索しました。部屋は荒れており、トイレも風呂場も相当なもの……。
そして、押し入れからは推定2~4歳の幼児とみられる白骨死体が発見されます。更に調べを進めていくうち、峰岡里美が過去に子供を産んでいたことも分かりました。
里美の子供の名は”重樹”。生きていれば18歳で、被疑者と年齢も近い。その頃、越野係長から被疑者の意識が戻ったとの連絡が……。
翌日、姫川と菊田は被疑者に一情聴取を行うと、彼は峰岡里美の息子の重樹であることを確認。更に、押し入れにあった白骨死体は重樹の弟”ヒロ”であることが判明しました。
重樹の証言によると、里美は2人の男の子を出産していましたが、当時の里美はいつも酔っていてほとんど家に帰らなかったと言います。
それでも弟がいるから寂しくなかった……と。ある日、ヒロはいつものようにゲームをしている途中で眠ってしまった。翌朝、里美が帰ってきた時にはヒロは死んでおり、里美は重樹に「お前がヒロを死なせたんだ」と責められたとのこと。
そして、引っ越しを理由に重樹は外に連れ出され、「迎えに来るまでそこで待ってて」という言葉を最後に、置き去りにされてしまったということでした。
重樹は、「ヒロが死んだのは僕のせいじゃない」と認めてほしかっただけで、全く関係のない人を殺してしまったことに心を痛めます。
重樹はヒロを本当に可愛がっており、ヒロも兄・重樹のことが大好きでした。母親さえ守っていてくれれば、ヒロは死なずに済んだかもしれない。
そして、最後に姫川に「僕を重樹と呼んでくれて、そしてヒロを見つけてくれてありがとう」と、誰にも知られず亡くなった弟のこと、母親でさえ呼んでくれなかった名前を呼んでくれたことに感謝したのです。
ドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』6話を観た感想
今回は、何とも切ない事件でした。育児放棄した挙句に、弟の死をまだ小さな兄に押し付け、さらに兄までも置き去りにするとは……。
まさに「胸糞悪い」という言葉がぴったりの事件でした。子供たちは就学歴もない、いわゆる居所不明児童。
彼はきっと”重樹”という名前を呼ばれたことが無かったんですね。内田茂之と名乗っていたのは、捨てた母に対する抗議の意味もあったのか、呼ばれることのない名前なら違う名前を名乗ろうと思ったのか……。
その想いは彼にしか分かりません。里美には、外に出てはいけないと言われていたから、弟が出来てとても嬉しかったという重樹。おむつを替えたり、ミルクをあげたり楽しかったし寂しくなかったとも話していました。
兄弟は、母のいいつけを守り外には出ませんでした。だから、彼らが頼れるのは母だけだったのです。しかし、その母も酔っているか帰って来ないか。
小学生であれば低学年、幼稚園であれば年長くらいの重樹に、すべての責任を負わせた峰岡里美。
刑事ながらに「峰岡里美はあの時死んだほうが良かった」と思ってしまったという姫川。刑事であっても、彼女はひとりの人間としてそう思ってしまったのかもしれませんね。
6話の視聴率は6.8%でした(ビデオリサーチ調べ、関東地区)