「モンスター:エド・ゲインの物語」Netflix実話との違いを徹底解説|事件・裁判まとめ

モンスター:エド・ゲインの物語,チャーリー・ハナム 実話・実在の人物を基にした
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Netflixシリーズ「モンスター:エド・ゲインの物語」は、実在の猟奇殺人犯エド・ゲインを題材にしたサイコスリラードラマ。本作では、ゲインの歪んだ愛情と狂気が描かれていますが、物語の多くは脚色されています。この記事では、実際の事件との違いや、裁判の真実、そしてハリウッド作品への影響を詳しく解説します。

  • 2025年/アメリカ/全8話
  • 原題:Monster: The Ed Gein Story
  • 配信:Netflix
  • リリース:2025年10月3日
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あらすじ

モンスター:エド・ゲインの物語,チャーリー・ハナム
「モンスター:エド・ゲインの物語」©︎Netflix,Inc.

アメリカのウィスコンシン州プレインフィールドにある農場で、内気な次男エド・ゲイン(チャーリー・ハナム)と、厳格な母オーガスタ(ローリー・メトカーフ)が暮らしていました。長男のヘンリーは自由奔放で、1週間ほど家を空けていました。

ある日、納屋で薪割りをするエドの元にヘンリーが現れ、彼女と結婚するために家を出ることにしたと話します。敬虔で厳格な母が許すわけがないと笑うエドに対し、ヘンリーは目を覚ましてここから逃げるよう懇願しました。

ヘンリーは盲信的に神を信じてエドの自由を奪う母は異常なのだと説明しますが、エドは怒りを露わにします。母を馬鹿にされたと思ったエディは感情を抑えきれず、側にあった薪でヘンリーの頭を殴りつけました。

エドはそのまま納屋を後にするも、翌日も同じ場所で倒れたままのヘンリーを見て彼の死を悟ります。すぐにエドはヘンリーの遺体を移動させて火をつけ、焚き火が燃え広がったと母に助けを求めに行きます。

ヘンリーは火事による死亡とされ、エドが追及されることはありませんでした。こうしてエドと母オーガスタの2人での生活が始まり、ヘンリーの死は彼らの心を蝕んでいきます。ついには最愛の母も亡くなり、1人残されたエドは自分が歪んでいることにも気づかず、次々と罪に手を染めていきます。

「モンスター:エド・ゲインの物語」キャスト情報

実際の事件から逮捕までの経緯

※「モンスター:エド・ゲインの物語」は脚色されており、実際の事件や内容とは異なります。以下が、実際の事件から逮捕までの経緯です。

1957年11月16日、アメリカ・ウィスコンシン州プレインフィールド。金物店の女主人バーニス・ウォーデンが姿を消しました。

午前9時30分頃、金物店のトラックが建物裏から出て行くのが目撃されましたが、その日に店を訪れる客はほとんどいませんでした。午後5時頃、バーニスの息子で郡保安官代理のフランクが店を訪れます。

すると、店のレジは空いたままで、床には血痕が残されていました。母の姿はどこにもなく、唯一の手掛かりはレジに残されていた販売伝票だけ。

最後の伝票には”不凍液1ガロン”が記録されており、購入者はエド・ゲインであることが判明します。警察はゲインを容疑者として特定し、捜索を開始しました。

その夜、警察がゲイン邸宅や自宅農場を捜索していると、納屋に吊るされたバーニスの遺体を発見します。鹿のように逆さ吊りにされ、体内は空洞で、首は切断されていました。

その後、ゲインは逮捕され、取り調べでバーニスの殺害を認めました。さらに、3年前に失踪したメアリー・ホーガンの遺体も自宅に持ち帰ったことをほのめかします。

解説|事実との相違

「モンスター:エド・ゲインの物語」は脚色されているため、事実とは異なる部分が多々あります。実際のエド・ゲインとの相違点は、以下の通りです。

エド・ゲインと恋人アデラインとの関係性

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「モンスター:エド・ゲインの物語」©︎Netflix,Inc

恋人のアデラインは実在したものの、エドとの交際期間は7ヶ月ほど。実際のアデラインはエドの家に入ったことはありません。

エド・ゲインと女主人バーニス・ウォーデンの恋愛関係

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「モンスター:エド・ゲインの物語」©︎Netflix,Inc

エドはバーニスに対しての所有欲は認めましたが、あくまで母親に似ていたからという理由から。これは他の犠牲者に対しても同様であり、バーニスに特別な感情を抱いていたわけではありません。

エド・ゲインはナチスの戦犯イルゼ・コッホを崇拝していない

エドがナチスの戦犯イルゼ・コッホの残虐行為を知っていた可能性はありますが、作中のエドのように彼女を崇拝していた証拠や行動を模倣した形跡はありません。

エド・ゲインは兄ヘンリーを殺害したかは不明

エドの兄ヘンリーは実際に山火事で死亡しています。遺体の頭部には打撲痕がありましたが、警察は他殺の可能性を否定し、死因は窒息死と認定。エドがヘンリーを殺害したという証拠や証言はありません。

エド・ゲインは迷い込んだハンター2人を殺害した?

エドが自分の土地に迷い込んだハンター2人を殺害した証拠はなく、この地域で起きたハンター2人の失踪事件は未解決のままです。なお、エドは実際の犯行ではチェンソーではなくナイフを使用しており、「悪魔のいけにえ」でチェンソーが使用されたのは映画のための創作に過ぎません。

エド・ゲインはベビーシッターのイヴリンを殺害していない

エドは近所でベビーシッターをしており、謎めいてはいたものの地元住民から信頼されていました。実際に子供を自宅に連れ帰るようなことをしたという証拠は一切なく、ベビーシッターのイヴリンが失踪した事件についても正式に関与がないと認められています。

エド・ゲインは連続殺人犯の逮捕に協力していない

モンスター:エド・ゲインの物語,チャーリー・ハナム
「モンスター:エド・ゲインの物語」©︎Netflix,Inc

エドがFBI特別捜査官に協力して連続殺人犯の逮捕に貢献したというのは事実無根です。「モンスター:エド・ゲインの物語」第8話で描かれたFBI特別捜査官ジョン・ダグラス、ロバート・レスラー、ボブカットヘアの女性は、デヴィッド・フィンチャーが手がけたNetflixシリーズ「マインドハンター」のオマージュと思われます。

エド・ゲインはカニバリズムではなく、死体に性が絡んだ暴行もしていない

作中ではエドがカニバリズム(人食い)に惹かれていたり、近所の人に鹿肉と扮して人肉を配っていたかのように描かれていました。しかし、実際にそのような事実を示す証拠は一切ありません。同様に、エドが死体に性が絡んだ暴行をした証拠もなく、エドは悪臭を理由にその質問に対し繰り返し否定しました。

実際の裁判(判決)とハリウッドへの影響

エド・ゲインの裁判と判決

※作中でのエド・ゲインは裁判が行われることなく死亡しましたが、実際には裁判が行われています。

1957年11月21日:起訴・初公判

エド・ゲインはバーニス・ウォーデン殺害の罪で、ワーシャラ郡裁判所にて起訴されます。ゲインは精神異常を理由に無罪を主張。翌日、ゲインが正気を保っているかを判断するため、殺人容疑については保留されました。

精神鑑定・精神病院収容

起訴後、ゲインは最大の防犯設備が整う中央州立精神病院に送られます。1957年12月9日、ゲインは医師との面談にて記憶障害を訴えました。12月12日、医師はゲインが母親に対して異常に強い愛着心があることに気づきます。

12月17日、判事は中央州立病院から「エド・ゲインは精神異常であり、永久に入院させるべきである」との意見書を受け取りました。1958年1月6日、ゲインが正気であるかについての診断が実施されます。ゲインは法的に心神喪失であると宣告され、中央州立病院に収容されました。

1968年:裁判能力回復・公判開始

1968年1月22日、病院で10年間過ごしたゲインは、裁判を受ける資格があると判断され、手続きが開始されます。11月7日、ゲインの裁判が始まり、この裁判は陪審制ではなく、裁判官単独審理(陪審を置かない方式)で進められました。

判決:有罪だが精神異常を理由とする無罪/施設収容

1968年11月14日、裁判官はバーニス・ウォーデン殺害について有罪を下します。ところが、別の審理で当時は精神異常状態にあったことを認め、責任能力がないと判断。

ゲインを刑務所に送るのではなく精神病院への収容を命じました。この判決により、ゲインは精神医療施設で終身収容されることになりました。

その後・ゲインの最期

ゲインは余生を病院施設で過ごし、1984年7月26日に77歳で肺がんに起因する呼吸器不全で亡くなりました。ちなみに、ゲインはメアリー・ホーガン殺害も認めていたものの、ウォーデン殺害の件でしか起訴されなかったのは、裁判官が費用がかさむことを理由に起訴を行わなかったからでした。

ハリウッドへの影響

サイコ,悪魔のいけにえ,羊たちの沈黙
「サイコ」(C) 1960 Shamley Productions, Inc. All Rights Reserved. 「悪魔のいけにえ」(C) MCMLXXIV BY VORTEX, INC.「羊たちの沈黙」© 1991 ORION PICTURES CORPORATION. All Rights Reserved

「モンスター:エド・ゲインの物語」は脚色がされ、事実とは異なる部分が多いですが、エド・ゲインがハリウッドに多大な影響を与えたのは事実です。

作中でも紹介されたアルフレッド・ヒッチコック監督作「サイコ」、トビー・フーパーとキム・ヘンケルが手掛けた「悪魔のいけにえ」、ジョナサン・デミ監督作「羊たちの沈黙」は、エド・ゲインの事件から影響を受けています。

ただし、「サイコ」は1959年にアメリカ出身の作家ロバート・ブロックが発表した小説「サイコ」を、ヒッチコックが映画化したものです。原作小説は3部作のスリラー小説シリーズであるのに対し、ヒッチコックの4部作は1作目以降は全く異なる内容となっています。

その他にもエド・ゲインから影響を受けた映像作品は多々あり、ニコラス・ケイジ主演作「コン・エアー」のガーランド・グリーンや、アメリカのホラーアンソロジーシリーズ「アメリカン・ホラー・ストーリー:精神科病棟」のオリバー・スレッドソンというキャラクターもその1つ。

音楽作品では、アメリカのスラッシュメタル・バンド”スレイヤー”の「デッド・スキン・マスク」、アメリカのヘヴィメタルバンド”マッドヴェイン”の「Nothing to Gein」という曲が、エド・ゲインから着想を得ています。

ちなみに、「モンスター:エド・ゲインの物語」第8話にて登場した、FBI特別捜査官ジョン・ダグラスとロバート・レスラーは実在した人物で、連続殺人犯の行動を分析するプロファイリング分野の第一人者です。ダグラスとレスラーが面会に訪れた連続殺人犯ジェリー・ブルードスを演じたハッピー・アンダーソンは、Netflixシリーズ「マインドハンター」でも同じ役を演じています。

「マインドハンター」では、ダグラスがホールデン・フォード、レスラーがビル・テンチ、ボブカットの女性がウェンディ・カーと役名が異なるものの、基にされた実話は同じです。同作は、鬼才デヴィッド・フィンチャーが監督を手掛けたことでも話題を呼びました。

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